亜美に男が居たとわかったところで、俺の気持ちが変わるわけもない。
どうにかして彼女を手に入れる。
その事だけを考えていた。


けど、今、彼女が幸せなら、それならそれで良いとも思った。
俺は亜美の笑った顔が好きだった。
いつも泣いてばかりの亜美が、笑う。
その顔が一番好きだった。



今、亜美は幸せなんだろうか?




偶然だった。
本当に偶然だったんだ。


会社の近くのカフェの窓際。
俯く彼女の姿が見えた。
彼女の目の前には男が座ってた。


彼女はその綺麗な顔を苦痛に歪めていた。


男が何かを言った瞬間、彼女は顔を上げ、ゆっくりと口を動かした。


『そっか。そうだね・・・今までありがとね。』


彼女の口はそうはっきりと動いた。


その苦痛に歪むその横顔を、綺麗だと思った。
孤独に耐えるその唇が、愛おしいと思った。
怒りに震えるその拳を、護りたいと思った。
悲しみに揺れるその瞳に、見詰められたいと思った。


亜美が今、幸せじゃないなら、俺が、俺のこの手で幸せにしてやる。


俺の手から零れ落ちた最愛のモノを、一刻も早く手に入れるべく、俺は動いた。


けど、亜美は俺のことを覚えていない。
どうやって思い出させようか?
俺は俺なりの作戦を決行させた。