電車に揺られながら、どこに行くのかと山野君に聞く。


「着いてからのお楽しみですよ。」


彼は何も言わない。
自分のことも、これからのことも、私達のことも。


車内、周りの女の子達の視線が痛かった。
どこかの雑誌にでも載っているような容姿の彼に、自然と女の子達の視線は集まる。


どう見ても年上な私とでは不釣り合い。
彼は童顔だから、大学生だと言っても通るだろう。
反対に私は幼い時から、年よりもかなり上に見られた。


4つの年の差は、外見からは10歳は離れているように見えるだろう。
外で会ってみて、初めて感じた劣等感。


社内では私と山野君の年齢は知れ渡っていること。
4つくらいの年の差は、なんてことはない。


外に出れば、見知らぬ人達は、私達の容姿で私達を認識し、その関係を勘ぐる。
こんな劣等感に苛まれたことは今までになかった。


電車の窓に映る私達の並んだ姿。
年の離れた兄弟にしか見えなかった。
その姿を見ているのが辛くなった私は窓から顔を背ける様に、身体を反転させた。


「ちっ、近いっ!!どうして目の前に居るのよ?」
「さっきから石田さんの後ろに立ってましたよ。」


嘘。
私の横に並んでたはず。
私の動きを察知して、私の背後に回ったくせに。


けど、その山野君の行動が嬉しかった。
きっと、窓に映った私の表情を見て、私の気持ちを察したんだろう。
私の顔はそんなにも、悲しみに歪んでいたのだろうか?


ドアと山野君の間に挟まれ、彼の鼓動が私の耳にまで届いて来そうな距離に、ドキドキする。
こんな気持ちになったのも、久しぶりだった。


彼の傍はどうしてか落ち着いた。
彼の強引な言葉や態度に翻弄されてはいるけど、彼の傍に居ることが心地好く、そして落ち着いた。


波立っていた私の心が、彼の拍動の音により、落ち着きを取り戻していた。