「うわっ!!待ち合わせしてたの?ごめん、ごめん。私、お邪魔だね。」
「ちがっ!!有希!!待って!!!」


有希の後姿を追いながら、後ろから送られて来る視線に振り返る。


「ちょっと!どういうこと?どうして昨日のことが会社で噂になってるの?」
「俺じゃないですよ。」
「惚けるのもいい加減にして。」
「ほんとに俺じゃないですから。」
「じゃ、何で昨日のことがバレてるのよ!」


勢い余って、山野君に近づき過ぎた。
ハタと気付けば、目の前に綺麗な彼の顔があった。
ここは屋上だった。
他にも社員は居る。


チラチラと私達を盗み見、何か話している。
あーもうダメだ。
これで会社中の噂だ。


「じゃ、どうして昨日のこと秘書課にバレてるの?」
「昨日、後ろのテーブルに、秘書課の子達が居たんですよ。俺、知ってましたけどね。」
「え―――――っ!!!」


じゃ、言ってよね。それを先に。
そう思ったけど、声には出さなかった。
私自身、彼と飲みたいと思ったのは本当だし、こうなってしまったのも私が原因だから。


はぁ。と私は大きな溜息を吐いて、屋上を後にしようとした。
お腹が空いた。
そう言えば、有希に引っ張って来られて、昼ご飯まだだな。
そんなことを考えながら歩いていたら、後ろから声が掛かった。


「放って行かないでくださいよ。お昼、まだでしょ?一緒に食べましょ。」
「食べないわよっ!」


いつもの私達のやり取りの様に、私は後ろを振り返らず、山野君に返事をした。




その日の内に噂は会社中に広がり、私達は軽く公認の中になってしまった。
ウチの会社は社内恋愛禁止ではなかったので、交際が公になっても構わない。


というか、付き合ってないし。
ただ、山野君が私の部屋から出勤したってだけ。
って、それのがヤバくない?


付き合ってもないのに、朝帰りとか。
しかも、女の私の部屋から帰るとか。
それに私、4つも年上だし。


年下のイケメンに入れ込んでるお局女上司?
そんな構図が頭に浮かんだ。


いっそのこと、付き合えば良いのか?
否、それは違う。違うじゃないか。


もう、ダメだ・・・・・頭が回らない・・・・・