山野君から遅れて出社すれば、女子社員が大騒ぎしていた。


「ねぇねぇ、今日の山野君、見た?昨日と同じYシャツだったよ。」


女はよく見ている。
スーツのジャケットは変わらなくても、Yシャツやネクタイは変えて来るのが当たり前だ。


山野君はイケメンな上にお洒落でもあったから、2日も同じYシャツを着て来ることなんてなかったんだろう。


私は大丈夫。
シャワーを浴びる暇はなかったけど、ちゃんとスーツも髪型も変えた。
化粧も一旦落とし、会社用のメイクに変えた。


バレるはずがない。
大丈夫。大丈夫。




昼休憩、有希が企画部にやって来た。


「連絡もなしでやって来るなんて珍しいね。」
「これが連絡してる場合ですか!!!亜美ちゃん、ちょっと!」


グイと腕を引っ張られ、外に連れ出された。
そのままどんどん進む有希に、着いて行くしかない。


と、周りの私を見る目が何だか痛かった・・・・・



屋上


「亜美ちゃん!隠し事はよくないなぁ。」
「何のことよ?」
「親友の有希ちゃんに隠し事をするだなんて。」
「だから、何のこと?」


コツコツコツとヒールの踵を地面につけ、有希はジロリと私を睨んだ。


「昨日、誰と一緒だったぁ?」


えっ?
何で?
どういうこと?
どうしてそう来る?


「ほらほら、昨日、誰と一緒だったのよ?」
「誰から聞いたの?」
「秘書課では、もうその噂で持ちきりよ。」


もちろん噂を流したのは・・・・・


「探しましたよ、石田さん。」


ほら来た、噂の根源が。