山野将樹 17歳


小さい頃、よく『可愛いね』と言われて育った。
小学生になった頃、バレンタインデーには段ボール一杯のチョコを貰った。
中学生になれば『可愛いね』と言われていたのが『カッコいいね』に変わった。


折に触れ、女達から告白はされたが、いつも返す言葉は同じ。


『俺、女に興味ないから。』


そうその言葉に嘘はなかった。
アイツ以外の女には誰にも興味はなかった。




高校2年なった秋。
友達から大学の学園祭に行こうと誘われた。
進路を決めるにも、大学を目の当たりにし、どんなものかこの目で見ておこうと誘われた。
そいつに取れば、それはただの口実で、その学園祭にお目当てのアイドルが来るらしかった。


大学進学を決めてた俺は、一度大学ってのを見ておくのも悪くないなと、そいつの提案に乗った。





秋の装いが深まった11月。
大誠に連れられてやって来た学園祭。
あちこち回って、その上余りの人の多さに、少し嫌気が差して来た時だった。


セントラルガーデンと呼ばれる開けた広場で何やらイベントが始まった。
どうやら今年のミス皇華を決めるらしい、ミスコンが始まった。


女に興味のない俺は、離れたベンチに腰を掛け、その様子をただただ見詰めていただけだった。

最終選考。
ミス皇華に選ばれるその女は、どれだけ容姿端麗でも俺の心を持ってくことはないだろうなと、冷めた感情で最終選考の発表を聞いていた。



吹奏楽部の生演奏の盛大なドラムロールが流れ、今年のミス皇華の名前が呼ばれる。







「本年度、ミス皇華は・・・・・・・石田亜美さん!!!」




俺の心臓は、その名に大きく鼓動を始め、その拍動に合わせるかの様に俺は勢い良く立ち上がり、我を忘れて、ミスコン会場の前まで走り出ていた。




俺の目に映ったのは、会いたくて会いたくて、この11年、片時も忘れたことのなかった、俺の唯一無二の女がそこに立って居た。