あたしは躊躇っていたことも忘れカウンターに詰め寄った。
両手に提げた箱をその上に載せる。

「もしかして、あたしが来るのがわかってた?
郷太が知らせたの??」

六車と三田を交互に見る。
ふたりはそれぞれに頷いてみせた。

「なーんだぁ、、」
どっと肩から力が抜けていくのを感じた。

「あたし、、どう言ってお店に入ったらいいかとか、おじいちゃまおばあちゃまが居たらどう言おうとか、いろいろ考えてたのに、、
はぁーーーー、、」
カウンターに突っ伏した。

「それはホッとしたってことですか?」
頭上から優しい声が降りてきた。

小さく頷くとカウンターにおでこがごちんと音を立てた。

三田が心配してくれるのと、六車がくすっと笑うのが聞こえた。

「大方、もう自分はここの者じゃないから来てはいけないと思ったんでしょうが、問題ないですよ。」

「どうして?」がばっと身体を起こした。

「お客様はいつでも歓迎です。」
優しそうな笑顔と声だが、きっぱりと線を引かれている気がした。

こぽっとコーヒーの落ちる音が一際大きく聞こえた。

「さぁ、美味しいコーヒーを召し上がれ。」
「あ、そうだ、ケーキをね、焼いてきたの。みんなで食べて欲しくて。郷太から聞いたよね?」