次郎が振り向いた。

「?」

あからさまに怪訝そうな表情をしている。


僕は笑った。

「そうだ、七花がさ、ケーキ焼いたんだって。」


「それで?」

「みんなの分、あるらしいよ。」

「で?」

「楽しみじゃないの?


あー、そっか、次郎は甘いの、


好きじゃないんだっけ。」

「知ってるなら、」

次郎の肩越しに、七花の家がちらりと見えた。
「言うまでもないだろ。」
ため息混じりに次郎が言った。

焼けるケーキの甘い香りが思い出されるようだった。

「要らないなら、次郎の分、僕がもらってもいい?」

「早く行け、ほら。」
「ちぇっ、はいはーい、、っ。」
郷太は軽く頷くと姿を消した。





郷太の消えた後、次郎は辺りを慎重に警戒したが、特に不審な動きも気配もないようだった。

「ケーキねぇ・・」