部屋に戻ってきた希代香は、片手に水の入ったコップと鎮痛剤が載ったトレーを持ち、もう一方の手に赤い小さな箱を提げていた。

そして俺がここへ来た決して明かせない理由を根掘り葉掘り尋ねることなく、薬の箱から2錠を取り出し俺の手のひらに載せてきた。
「はい、しっかり飲んで、良くなってね。」

完全に俺が鎮痛剤が欲しくてここに来たと思っているらしい。

コップを俺に差し出しては、飲めと言っている。

「いや、俺は、、」
「俺は?」

「俺は、、風邪じゃなくて、、」
「あ!もしかして、次郎のほう?!」

希代香は『ぽん』と手のひらを合わせた。


「なんだ、そうなの、あー、危なかった、一花じゃないのね。早とちりでお薬飲ませちゃうところだったよ。」

『まぁ、、いいか。次郎のせいでもあるのだし。』

「この薬は、届けておく。

助かった。」
次郎が風邪の体で俺は進めることにした。