「ダーメ!見舞いは相田、水無月は仕事。これ業務命令ね。さあ、急いで!」

 私は、設計図の入った彼のパソコンと果物籠を押し付けられて、課長に追い出されるように扉へ向かう。

 その様子を怨めしそうに睨んでいた水無月サンが、擦れ違い様にポソりと言った。

「……相田先輩。
 そういえば最近、バッサリ髪切られましたよね。…なーんか、イタイタし~い!
 失恋アピールみたいな?」

 クッと唇を歪めて笑うと、パタパタと走って行った。


…うっ、痛いトコロをついてくる。
やっぱミエミエだったかなあ…


 課長のバカ。
 だから嫌だったんだ。
 特にオトコが絡んだ時の、女の世界のオソロしさを全然分かってないんだから。

 後でチクチク苛められる私の身にもなって欲しい。

 後輩にさえものの言えない弱気な私は、鬱々としながら彼の入院先に向かう。

 病院は会社から1キロほどの距離を行くと、白い建物が見えてくる。

 あの3階の病室に、彼はもう1週間もいるのだ。