「や、やだ……!先生下ろして……っ」
黙り込んだ二人を残して歩みを進める誉くん。
当然、私は抵抗した。
「せんせ、ゴホッゴホッ」
けど、その抵抗も熱がある体ではたいした抵抗にもならない。
「せんせ──」
「もう黙れ」
耳元で聞こえた誉くんの艶めいた声にビクッと揺れ動く体。
そして。
「……っ、なん…」
まるで抱き締めるように私の体を自身に引き寄せた誉くんに、思わず戸惑いの声が零れ落ちる。
誉くんは優しいから、お姫様抱っこしたり抱きしめたりなんて特に意味なんかないってことぐらい分かってる。
分かってるから、余計にツラいの。
誉くんの優しさは……罪だよ。


