「……大丈夫です。失礼します」
「華恋──」
「先生!」
「……っ、」
「……さようなら」
一瞬の隙をついて誉くんの手を振り払い、私は誉くんの顔を見ることもないままその場から駆け出した。
───バンッ!
非常階段の扉を力任せに押し開けて、外に飛び出す。
途端、弾かれたように溢れ出る涙。
ズルズルとその場に崩れ落ち、洩れる嗚咽を必死に喉奥で留めるけれど止まらない。
「……っぅ」
“お前が、心配なんだ”
久しぶりに近くで聞いた、誉くんの声。
私だけに向けられたその言葉にどうしようもなく胸が熱くなって、余計に涙が溢れ出した。


