“あの日”から三週間。
あっという間に春休みがすぎて、新学期が始まった。
泣いて泣いて泣いて、泣き尽くした春休み。
みっちゃんや吏架子、響に愛華ちゃん。
みんな心配してくれて、私が何も考えなくていいように色々な所に連れて行ってくれた。
それでも、私の心の片隅にはいつも誉くんがいて、誉くんを想ってた。
どれだけ泣いても誉くんへの気持ちは消えてくれない。
むしろ強くなってる気がして、毎日が堪らなくツラかった。
誉くんに逢うことがないまま時はすぎ、やってきた始業式の日。
いまだかつて、あの日ほど学校を辞めたいと思ったことはないと思う。
『一年生の数学を担当させて頂きます。本庄 誉と申します。宜しくお願い致します』
いつもとは違う穏やかで優しい笑顔。
誰もがうらやむ抜群のスタイル。
低音だけど耳障りの良い、甘さを含んだ声。
その存在感は嫌気を差していた女子生徒のみならず、男子生徒までも魅了した。


