「………っ、」
距離にして15センチほど。
誉くんの黒髪がすぐ目の前でさらりと揺れ、黒曜石のような瞳がまっすぐ私の瞳だけを見すえている。
いまだかつてないほど近い場所にある誉くんの端整な顔に、心臓がドキドキしすぎて今にも爆発しそう。
誉くんからすればきっとなんてないことなんだろうけど、私からすればとんでもない状況なわけで。
もう、二時間かけて覚えた公式も単語も、全て忘れてしまうぐらい緊張感がマックスに達していた。
……どうしよう。どうしようどうしようどうしよう。
最初、なんて言えばいいんだっけ?


