「喧嘩は良いけどもう少し小さい声でしろよ?」
さっきの私たちの喧嘩を思い出しているのか、クツクツと笑う誉くん。
うぅ……最悪だ。
誉くんは私と響が“付き合っている”ことを知らない。
たとえ“偽り”でも、響と“付き合ってる”だなんて誉くんに言いたくなかったから、響に内緒にしてってお願いした。
それなのに、誉くんはヤキモチの一つも妬いてはくれない。
ちょっとぐらいその優しい笑顔崩して見せてよ。
誉くんの、馬鹿。
「華恋、何ボケっとしてんだよ。帰るぞ」
「え?あ、うん……」
響の呆れた声が耳に届いて顔を上げれば、早く来いよとでも言うように手招きしていて。
私は沈んだ気持ちのまま、とりあえず二人の元へと駆け寄った。


