当然の如くそう言い放った上司はマウスに手を置き、こちらを睨んだ。

よくも自分で、鬼に金棒なんて言う。

思わず笑えば、隣で彼も楽しそうに笑った。



「仮眠用のソファー、一つしかないですけど、どうします?」

「お前、今日寝れると思ってんの?」

「……またセクハラですか」

「ちげーよ。お前の仕事が朝までに片付くのかって話だよ」



深夜のオフィスに軽快に鳴るのは、私たちがキーボードを叩く音。

聞き慣れた心地の良い音を聞きながら、私は隣を見て再び小さく笑った。



「片付くって、思ってますよ。だって、今の私は " 鬼に金棒 " ですから」



始業時間まで、あと約8時間。

終わりのない仕事はないと信じて、もう少しだけ頑張ろう。