未熟女でも大人になっていいですか?

それから棟梁は俺のことをトンカチで指して、『何もやることがないなら手伝ってくれ』と言った。


『何で俺がおっさんを手伝わなきゃいけねぇんだ』


イヤなこった…と断った。

でも、棟梁はそれからも毎日俺を見かける度に『手伝ってくれ』と声をかけ続けてきた。




「…あの頃からずっと、保護者気分だったんだろうな。断わる俺の様子を見ながら元気かどうかを確かめてたんだ」


「いい人ね。富沢さんは」


カツラの声が幾らか明るい調子に戻ってる。

目を見て頷くと、優しい表情をして笑った。


「望さんの名前を一番最初に『高望みだ』と言ったのは、富沢さんだったのね」


「…ああ」


座り込んでいたカツラは立ち上がった。

浴衣の裾から埃を落とすように払い、ソファに座り直す。


女の浴衣姿は綺麗だ。

特にカツラは特別だと思う。



「いつから手伝い始めたの?」


真面目な目がこっちを伺う。

余計なことなど一切考えさせても貰えない。



「声をかけ続けられて10日くらい経った頃。どうしても1人ではやり難い作業があるから手伝って欲しいと頼まれた」


「頼まれると断れない人だもんね、望さんは」


納得して頷いてる。


「まぁ、その時はたまたま女にフラれた後で、気もめげてたしな」



その言葉に反応して顔が般若のように強張る。


女の嫉妬は基本的に好きじゃねぇ。

でも、カツラの嫉妬ならもっと見てみたい。


「初めて手伝った仕事って何だったの?」


仏頂面のまま聞いてきた。


「脚立押さえ」


「えっ…」


「今、バカにしたろ」


「うん、勿論」