未熟女でも大人になっていいですか?

ーー悔しい思いが胸の中に広がった。

直ぐに立ち去らずにいたのは、棟梁に(勝ちてぇ)と考えたからだ。

このままバカにされているのは歯痒くて仕方ねぇ、何か言い返してやろう…と思った。



『おっさんは大工なのかよ』


誰にでもできそうな仕事だな…と言うつもりだった。


『俺は大工でも宮大工という仕事をしておる。いろんな寺や神社仏閣を回る「根無草」みたいな仕事だよ』


『地味な仕事だな』


思いきりバカにしたつもりだった。

でも、棟梁は微笑んで……


『地味だけど奥は深いぞ。女の尻を追っかけてばかりいるお前には、想像もできんだろうけどな』


バカにしたつもりがし返された。

悔しくて何か言い返すネタはないかと辺りを探し回った。



『お前、名前は何ていうんだ』


ウロつく俺を邪魔にもせず聞いてきた。


『その前におっさんの名前は何てんだよ』


人に名前を聞く前に名乗れと言ってやった。

棟梁は『それもそうだ』と笑い、素直に名前を教えてくれた。


『ワシの名前は「富沢 剛」、なかなかいい名前だろう』


後にも先にも名前を自慢する大人なんて見たことがない。

呆れる俺を見越して『お前は?』と聞き返された。


『……高島 望』


投げ付ける様に答えた。


『たかとう のぞむ?高望みしそうな名前だな!』


はははは…と笑い飛ばされた。