未熟女でも大人になっていいですか?

意味の深い言葉に聴き入りながら亡くなった両親のことを思い出した。


亡くなった父の葬儀の日、母は一粒の涙も溢さず見送った。

でも、その目は明らかに真っ赤で、『お母さんのお目目、ウサギさんみたいだね』と、無邪気に笑ってしまった。



歩き去っていく師匠の背中を見届けながら、ずっと仏壇の引き出しに父の写真を仕舞い込んでいた母の心情を想いやった。


母は父のことを心からきっと愛していた。

だからこそ、亡くなった事実を認めたくない気持ちが何処かにあったのかもしれない。



幼い頃から事ある毎に納骨堂へ参らされた。

あの場所は唯一、父と母が会話できる空間だったのだろう…と、今更ながらに思い知った。




「行くぞ」


背中越しに声をかける男を振り返る。

頭二つ分背の高い男の腕に指先を通し、ぎゅっと肘の辺りを掴んだ。



「…………」


言葉も発せず驚いた様な顔をして見つめられた。

その眼差しに目を向けながらゆっくりと歩き出す。


砂利道は明日へと続く道。

私はこの腕を捕まえて絶対に離れないでいよう。


(望さんの過去がどんなに乱れていたとしても……今の私にはこの人しかいないのだから……)