「保さん!……嫌よ!……まだ早過ぎる……!」



藤が大人になるまで一緒に生きようって約束したのにどうするの?

いつかは両親にもお詫びに行こうと話したこともあったじゃない。


藤棚の蔓の世話は毎年誰がするのよ。

そもそも、私が他の誰かを好きになったらどうするの?


私はまだ30丁度なのよ?

まだ若くて20代にも間違われることだって、独身ですか?と聞かれることだってあるのに。



「お願い………生き返ってぇ………たも…つ……さ…ん……」



胸に張り付いて泣き続けた。



藤の前でだけは、決して泣かないと約束していた。


だから、それだけは守り通さないといけないーーー。





「お母さんのお目目、ウサギさんみたいだね」


葬儀の席で燥ぐ娘を抱いた。



「そうね。おかしいわね」


笑いかけながら心の中で咽び泣く。




保さん……


私はこれからもずっと貴方だけを愛し続けていきます。

流した涙の分だけ愛を深めて、人生を歩んでいくから。




「だから、お願い……」



どうか1日も早く私を迎えに来て。


そしたら私、真っ直ぐに貴方の胸の中に飛び込んでいくわーーー。