「『ヤマガタ ミツ』は漢字でどう書くのですか?」
不意に聞かれて顔を上げた。
笑みを浮かべた男がペンと紙を差し出す。
向けられた紙にペン先を走らせながら、指が小刻みに震えた。
「…そうか。難しい方の『縣』の字を書くんですね。えっ!?ミツは蜂蜜の『蜜』ですか!?」
いちいち感心したり驚いたりする。
「私は長女で…女の子が欲しかった父は、思いきり甘やかして育てようと決意してこの名前を付けたんだそうです」
上には兄が2人いる…と教えた。
「成る程、待望のご長女の誕生だったという訳ですね」
「え、ええ。まあ」
お陰で窮屈なくらい可愛がられて育った。
「下にはご兄弟がいらっしゃるのですか?」
「妹が1人と弟が1人」
「蜜さんは5人兄弟の真ん中なんですね」
「そ、そうです…」
すっかり名前呼びが定着してる。
バンビだと思ってた姿が崩れ始める。
狐でも狸でもない気がする。
優しそうな紳士で、おとぎ話にも出てきそうな王子様ぶりを見せられる。
「仕事は何をされてるのですか?」
もはや、これはお見合いに近い世間話だ。
「小さな会社で事務職をしてます」
「へぇー。事務ですか」
「ええ。似合わないでしょう?」
余計な一言を加えた。
目の前にいる男は返事に困り、小さな笑みを浮かべる。
不意に聞かれて顔を上げた。
笑みを浮かべた男がペンと紙を差し出す。
向けられた紙にペン先を走らせながら、指が小刻みに震えた。
「…そうか。難しい方の『縣』の字を書くんですね。えっ!?ミツは蜂蜜の『蜜』ですか!?」
いちいち感心したり驚いたりする。
「私は長女で…女の子が欲しかった父は、思いきり甘やかして育てようと決意してこの名前を付けたんだそうです」
上には兄が2人いる…と教えた。
「成る程、待望のご長女の誕生だったという訳ですね」
「え、ええ。まあ」
お陰で窮屈なくらい可愛がられて育った。
「下にはご兄弟がいらっしゃるのですか?」
「妹が1人と弟が1人」
「蜜さんは5人兄弟の真ん中なんですね」
「そ、そうです…」
すっかり名前呼びが定着してる。
バンビだと思ってた姿が崩れ始める。
狐でも狸でもない気がする。
優しそうな紳士で、おとぎ話にも出てきそうな王子様ぶりを見せられる。
「仕事は何をされてるのですか?」
もはや、これはお見合いに近い世間話だ。
「小さな会社で事務職をしてます」
「へぇー。事務ですか」
「ええ。似合わないでしょう?」
余計な一言を加えた。
目の前にいる男は返事に困り、小さな笑みを浮かべる。

