「その方なら先程から二階の予約席でお待ちかねです。どうぞ此方で御座います」
丁寧に案内してくれようとする。
(ふぅん、予約席まであるんだ…)
感心しながら背中を追った。
父の過保護下で育った私は、世の中のことをあまり知らずに社会へ出た。
本来なら短大卒業後も会社勤めをせず、家で家事手伝いをしなさい…と言われた。
「そんなの嫌です!私はお勤めがしたいの!」
どんな仕事でも良かった訳じゃない。
きちんとやりたい仕事があった。
でも、父は決してそれを許してはくれないだろうと思い、口にも出さず別の仕事に就いた。
「こちらで御座います」
女店員が前を避け、視界が開いたように明るくなる。
「あ……」
声を出したその男は、唖然とした表情で私の顔を見つめる。
その何倍も驚いた私は、ピクッと引きった彼の表情を無言で眺めた。
「どうして、貴女が此処に……」
声が聞こえ直ぐに我に戻った。
おかしな顔をして佇む女店員の視線が気になり、何も言わずに席へ座った。
「……お手紙を頂いたからです」
無言でいるのもいけないと思い言葉を返すと、意味が分からない様子で首を傾げる。
「『ヤマガタ ミツ』に手紙を書いたのをお忘れですか?仙道 保さん」
少しばかりイラっとした。
前に会った時とは違い、『船頭』ではなく『仙道』さんと初めて呼んだ。
丁寧に案内してくれようとする。
(ふぅん、予約席まであるんだ…)
感心しながら背中を追った。
父の過保護下で育った私は、世の中のことをあまり知らずに社会へ出た。
本来なら短大卒業後も会社勤めをせず、家で家事手伝いをしなさい…と言われた。
「そんなの嫌です!私はお勤めがしたいの!」
どんな仕事でも良かった訳じゃない。
きちんとやりたい仕事があった。
でも、父は決してそれを許してはくれないだろうと思い、口にも出さず別の仕事に就いた。
「こちらで御座います」
女店員が前を避け、視界が開いたように明るくなる。
「あ……」
声を出したその男は、唖然とした表情で私の顔を見つめる。
その何倍も驚いた私は、ピクッと引きった彼の表情を無言で眺めた。
「どうして、貴女が此処に……」
声が聞こえ直ぐに我に戻った。
おかしな顔をして佇む女店員の視線が気になり、何も言わずに席へ座った。
「……お手紙を頂いたからです」
無言でいるのもいけないと思い言葉を返すと、意味が分からない様子で首を傾げる。
「『ヤマガタ ミツ』に手紙を書いたのをお忘れですか?仙道 保さん」
少しばかりイラっとした。
前に会った時とは違い、『船頭』ではなく『仙道』さんと初めて呼んだ。