詳しい経緯は後にでもできる…と考えた。

ものも言わずに立ち尽くすお母さんに自分の気持ちだけは教えておこうとした。



「あの、私……」


お母さんの顔を見ると、スルッと何処かへ逃げてしまう。


「お父さん、大変っ!結婚するんだって!!」


厨房の中に向かって叫んだ。



「えっ!?何だと!?」


調理をしていた手が止まる。


(ああもう……どうなるのこれ……)


涼しい顔している向かい側の男を見つめる。

まるで他人事のようにすまして、呑気にも程がある。



「望っ!!」


厨房からお父さんが駆け出してきた。



「本気で結婚するのか!」


声が大き過ぎだ。



「……するよ、だから連れてきた」


高島の眼差しは真剣そうに見えた。

でも、お父さん達は疑り深そうに見ている。



「いい加減な気持ちで言うんじゃないぞ」


「いい加減なら連れてこねーよ」


「本気なのね?」


「お袋まで言うのか」



信用ねぇな…と呟く。


ご両親の気持ちも分かる。

10年ぶりの再会を果たしたと思ったらいきなり結婚すると言い出されたら驚くだろう。



「貴女はこいつでいいんですか!?」


お父さんの目が私を捕らえる。

脇に立つお母さんまでが心配そうな顔をしている。


2人の食い入る様な眼差しに息を呑む。

でも、きちんと大人らしく対応しよう。