未熟女でも大人になっていいですか?

「あー満足した!」


向かい側の男は軽く手を合わせて声にする。


「朝から三杯もご飯を食べたんだもん。そりゃ満足よね」


こっちは気掛かりでそれどころでもないのに羨ましい。



「運動したお陰かな」


「あれも運動って言うの」


ずずっとお茶を啜る男の顔を見つめる。

赤面しそうな言葉を平気で言っても、特に恥ずかしくもなさそうだ。


「望さんは緊張とかしないの?ご両親には暫く会ってもいないんでしょう?」


いつ以来の帰省なのか知らないけれど、随分長いこと帰っていないと聞いていた。


「軽く10年ぶりくらいだからなぁ。嫌味の一つくらいは覚悟してる」


「10年!?ほぼ家出状態じゃない!」


驚いた。何て男だ。


「家出なら棟梁とこの修行を終えた時にやめた。一旦、実家に戻って仕事をする為にまた出たんだ」


「で、でも、それからずっと帰ってないってことなんでしょう?」


「帰ってねぇけど、たまに電話は出るぞ」


「それって声聞かせるだけじゃない」


「それだけでもいいんだ。お袋はそれで安心するんだから」


「お父さんには!?」


「あいつのことは知らん。俺なんか居なくてもいいと思ってる野郎だ」


「そんなことないでしょ!?親子なんだし」


「そんなことも稀にはあるんだ」


「稀には…って…」


根深すぎる。

この男と父親の間には、私が想像できない溝があるらしい。