「……ここ、」
そうしてたどり着いたのは、大きな大きな館だった。
でも、さっき見えたような明かりは付いていない。
……どうしよう。
もう、眠ってしまったのだろうか。
少し逡巡してから、それでも私は古びた扉をノックした。
「すみません…、誰かいませんか…?」
疲れからか、思ったより大きな声が出せなかった。
「………」
しばらく待っても応答がなく、やはり眠ってしまったのだろう、と思い扉に背を向ける。
少しここで様子を見て、朝になったらまた訪ねてみようと思った。
扉から三歩歩く。
と、後ろから重い扉が開く音がした。
そこに佇んでいたのは、
「……おや。……なにか、おこまりでしょうか?」
ふわりと笑う、優しげな青年だった。