ここはどこ?
寒くて寒くて、凍えてしまう。
………何故、私はこんなとこに……。
そして、ハッとする。
思い出せない。
私は、誰?
暗い暗い、森の中で目が覚めて。
寒くて、暗くて、何も思い出せなくて。
心臓が、どくんと大きく鳴った。
「……私…」
私は、誰。
私の、名前…。
名前、名前………。
私の、名前は……。
そのときふと一つだけ思い出した、名前。
「…ミズキ」
口にすると、かすかに聞き覚えがあった。
きっと、これが私の名前なのだろう。
名前だけでも思い出せたことにホッとしていると、くしゃみがでた。
…寒い。
とりあえずどこかで温まろうと思い、立ち上がって歩き出す。
……私は、ここで何をしていたの?
何か目的があった気がするけれど、思い出せない。
それでも、歩く。
よくわからないまま、歩き続けた。
ひたすらに歩き続けて、もうどのくらいたったのか。
それすら曖昧で、はっきりしない。
数分な気もするし、何時間とたっている気もする。
ただ、身体にまとわりつく寒さだけは、一段と強くなったきがした。
ザク、ザク。
暗い森の中を歩く度、足元からは草の音がする。
あぁ、寒い。
もう足も痛い。
早く、速く。
はやく見つけなきゃ。
はやく休める場所を。
「……きゃっ…?」
突然、強い風が吹いた。
寒さが濃くなり、私は自分を抱きしめるようにして目をつむり、風が止むのを待った。
少しして風が止むと、目を開ける。
一つため息をこぼして、前を向く。
「…あ、れ?」
なんとなく、奥の方に明かりが見えた気がした。
私はほぼ転がるようにして先を急いだ。