大きなホールのような場所。
耳に入るのは、心地の良いヴァイオリンやホルンなどの小さなオーケストラが奏でるワルツ。
その音を辿るようにくるくると回る、色とりどりの男女。
皆ここぞとばかりに着飾って、まるで宝石のようだった。
『姉さん、退屈じゃない?』
声が聞こえて、隣に視線を向けると、彼女がいた。
麻色の髪を美しく結って、宝石で飾られた髪飾りを付けている。
『私たちはここで見てることしかできないのよ?私だって、一曲くらい踊りたいわ!』
むーっと拗ねたような彼女の顔は、うっすらと化粧が施されていて、とても美しい。
私が困ったように笑うと、彼女も少し笑ってくれた。
『姫、一曲踊っては頂けませんか?』
私の前に、金髪が美しい男性が膝をついた。
そして、端正な顔をほころばせて、手を差し伸べる。
『まぁ!姉さんったら、素敵ね』
少しだけ拗ねたような声。
けれどその表情は好奇心に満ちていて。
私が男性の手を取ると、彼女は羨ましそうな目で私たちを見送った。
ホール中央にたどり着き、ダンスを初めて数分、彼女の方へ視線を向けると。
彼女にもまた、赤毛が美しい男性に誘われていた。
それを受ける彼女の表情は、とても幸せそうで、可愛らしかった。