奈々の買い物に付き合いながら、俺はずっと広瀬のことを考えていた。


俺は広瀬の何を知ってるだろう?


考えてみても何一つわからなくて。


そのことに何だかすごく落ち込んだ。


「じゃあ、そろそろ帰ろうか。」


奈々にそう言われ、俺はハッとして頷いた。


奈々を家まで送る間、俺たちの間に会話はなくて、その間も俺はずっと広瀬のことしか考えられなくて。


「なぁ、奈々…」


「ん?」


「広瀬ってどんな子?」


気付けばそんなことを聞いていた。


「……わかんない。あの子、思ったこと言わないし。私には気遣ってばっかで。

家ではね、学校のときみたいに明るくしゃべったりしないの。

だからどれが本当のつくしなのか、私にはわからない。ごめんね。姉妹なのに。」


奈々はそう言って苦笑いした。


そんな奈々に俺は何も言えなかった。