私はそのカードを引き抜かず、ピタッと止まる。

そして私は赤松千尋の顔をジーッと見る。

私は顔に出やすいわりには、人の表情を読み取ったりするのは苦手だ。

でもこの数ヶ月、須藤君と関わって少しずつ克服している自信がある。

最初、全くといっていいほど分からなかった須藤君の表情。

マスクをしていて何を考えているのかも思っているのかも分からなかった。

でも関わっていくうちに、須藤君の瞳を見ればなんとなく彼が何を思っているのか何となく分かっていった。

はっきり赤松千尋とはほとんど関わった事は無い。

でもきっと、彼の事を見れば分かるはず…!







「おい、さっさと引け。」

「待って、こっち…かな。」








そう言って私はもう1枚のカードに手を移し変える。

その瞬間、ピクッと赤松千尋の目元が動く。

これは…動揺…?

さっきの言葉からして、先程まで触っていたカードをさっさと引く事を促した。

つまり、今の動揺は、このカードを引いて欲しくない。

だから今私が触っているカードは、数字が書かれているカード!

私は勢いよくそのカードを引き抜き、バッとカードを見る。

そのカードには、悪魔の絵ではなく、Kと書かれた王様のカード。

私の持っているカードにもKと王様が書かれたカード。








「か、勝った…!」

「ちっ…」








私が満面の笑みで言うと少し悔しそうに舌打ちをされた。