だから、俺にしとけよ。




私をチラッと見る入谷くん。


もう最悪。




「もっかいしとく?
合宿の時みたいに大人なやつのほう」


私に顔をグッと近づけてくる。

驚いて、思わず抱えていたファイルや筆箱を落とす。


後ずさりをするも、入谷くんはどんどん近づいてきてついには背中に壁。



追い込まれてもなお、近づいてくる入谷くんにドキドキする。


好きじゃなくても、真剣な顔で近づいてこられると鼓動が速くなる。



私の後ろの壁に右腕の肘から下を全部つけて、見下ろされる。


すごく近い距離に入谷くんがいて、さっきまで強気な態度をとっていたはずができなくなる。




「い、りやくん……」



見上げたまま、入谷くんの胸板に手を置き離れようと両手で押し返す。