「じゃあ、俺とカラオケ行く?」 「行かない!」 もう顔を見なくても、声だけで誰か分かってしまうのが怖い。 入谷くんの方を見ずに、私も化学室を出て教室に向かう。 入谷くんはずっと私についてくる。 「ついてこないで!」 「いや、目的地一緒じゃん」 「……」 「伊都ちゃんおもしろいね」 確かにそうだけど。 ついてくるって考え方は違うか。 そう思い、ピタッと立ち止まる。 そして、廊下の端っこに寄る。 「お先にどうぞ」 「そう来たか」