だから、俺にしとけよ。




「伊都ちゃんさ、俺のこと避けてるよね?」


「……」


「その無言は肯定してるようなもんだよ」



立ち止まった私に、入谷くんが私の前に来て顔を覗き込む。


いつものおちゃらけた表情じゃない入谷くんが目の前にいる。




「意識してる?」


「……」


「え?もしかして俺のこと好きになった?」


「それはない!」


「うわ、そこで否定するなんて俺ショック」



ダメだ。

このままじゃ入谷くんのペースだ。



「遅刻する!」


そう言って、科学室まで入谷くんから逃げるように走った。

そのかいあって、自分の席に座ると同時にチャイムが鳴った。




ぎ、ギリギリだった……。