見慣れてる光景だけど、気持ちが慣れることは一向にない。
足は動かない。
昨日は確かに私の京ちゃんだった。
登山の時の大きな背中。
私だけの京ちゃんだったのに……。
「まーた泣いてる」
そんな声が聞こえたと同時にふわっと体が浮く。
驚きで声が漏れそうになるけど、口を手で抑えられる。
もう片方の腕はしっかりと私のお腹に回っていて、片腕で私を持ち上げている状態だ。
そのまま場所を移動させられ、下ろしてもらえたのは自販機がたくさんある休憩所だった。
そこに置かれているベンチに座らせられる。
私の隣に座り、頬に伝った涙を拭ってくれる入谷くん。



