「戻る!」
「良い雰囲気だと思ったのになぁ」
「バーカ!」
立ち上がって入谷くんに向かってあっかんべーをする。
それから右足を庇うように歩き出す。
私、本当に何やってるんだろう?
入谷くんは最低な人なんだから、油断しちゃダメなのに!
自分のさっきの行動を思い出すと、顔が熱くなる。
勉強終わりは頭がおかしくなってしまうんだ。
きっとそうだ。
適当に理由をつけて、そう思い込む。
「あれは、反則だろ……」
私の後ろでつぶやかれた声は届かない。
だから、入谷くんが頬を染めて頭を抱えていたことなんて、私が知るはずもない。



