入谷くんのバカ。

バーカバーカ。



「……バーカ」


「相崎さん、ちゃんと聞いてますか?」


「へっ?」


「先生に向かって“バカ”とは何ですか?
あなたには集団合宿で、しっかりと態度を改めてもらわないといけませんね」


「いや、違いま……」


「やらなきゃいけないことはたくさんあるんです。
相崎さんには特にいっぱい働いてもらいますから」


「……はい」



何も反論させてもらえなかったから、諦めて返事をする。


最悪だ……。



入谷くんのせいだ!

そう思い隣に座る彼を見る。


入谷くんも私を見ていて、目が合うと口を開いた。



“バーカ”



その口は確かにそう動いた。


声には出していなかったけど、ちゃんと伝わった。