まずはお礼。
本当に入谷くんがいてくれなかったら私はどうなっていたんだろう。
周りは忙しくてなかなか気づかなかった。
みんな自分のことだけで精いっぱいだった。
私だってそうだ。
忙しくて周りを見る余裕なんてなかったのに。
だけど、入谷くんは気づいてくれた。
「どういたしまして。
伊都ちゃんが泣きそうになってるんだから、気づくに決まってるでしょ」
優しい言葉に、安心感が出てきて涙が零れる。
それを自分で拭っていると、頭に入谷くんの大きな手が乗る。
「怖かったね。もう大丈夫だからね」
子どもをあやすかのような言い方。
それさえも入谷くんらしくて落ち着く。