だから、俺にしとけよ。





歩美ちゃんに助けを求めようと振り返ると、コーヒーを零してしまった人のところで手間取っている様子。


他から見ても、私はただ注文を受けているだけに見えるかもしれない。




「連絡先、教えてよ」


「一緒に抜け出そうよ」


「彼氏いる?」



いっきに話す彼らに涙が溜まってきてしまった。


人見知りだし、怖いし、もう無理だ。




「えー泣いちゃうの?」


「やべぇかわいい」


「涙拭ってあげようか?」




無理!


もう本当に無理!


逃げたくてもワンピースの裾は掴まれたまま。



助けて。

この場から連れ出してよ。




入谷くん……っ!