そこは花火を待っている人でいっぱい。
私たちは後ろの方で並ぶ。
「さっきの、勝ったらしてくれるやつ」
「うん」
「正直に答えろよ」
「うん」
顔は暗さに慣れてなんとなくは見えるけど、はっきりはどんな顔をしているのか分からない。
京ちゃんの方を見る。
京ちゃんも私を見ているのが分かる。
周りはざわざわしているのに、この空間だけが異様に静かに感じる。
「あいつと付き合ってんの?」
「……あいつ?」
声だけで真剣なのが分かる。
だけど、あいつじゃ分からない。
「あいつ。伊都によく絡んでる男。
合宿の時実行委員一緒にしてた、あのいかにもチャライ男」
「あー入谷くんのこと?」
「そう」
京ちゃんから入谷くんの話をされるとは思わなかった。



