「やっと笑った」 「えっ……」 「伊都は笑ってる方がかわいいよ」 急に呼び捨てにされてドキッと心臓が鳴る。 入谷くんに呼び捨てで呼ばれたの、初めてだ。 さっきとは違い、大人っぽい笑みを浮かべる入谷くん。 なぜか鼓動が速まりだす。 いてもたってもいられなくなり、勢いよく立ち上がる。 「帰る! いろいろとありがとう」 「あ、待って」 手を伸ばした入谷くんが、その場にしりもちをつく。 えっ? 驚いて入谷くんを見つめる。 頬を染めて、入谷くんは私に向かって手を出す。 「足、痺れた」