そして私に振り返り、向かい合う形になる。
この状況は理解できないけど、あの場から連れ出してくれて助かった。
じゃないと今も見たくない光景を見て、苦しかったと思うから。
「で、さっきの質問。
あの男のこと好きなの?」
「なっ何でそんなこと聞くんですか……!」
「伊都ちゃんが熱い視線を送ってたし、今にも泣きそうだったから」
ニコッと微笑みながら言う入谷くんは、私が困ってるのを楽しんでいるみたい。
「好きなんでしょ?」
もう分かってるくせに、私の返事を聞こうとする。
私の気持ちに気づいたのは入谷くんが初めて。
京ちゃんはあんなだから、ずっと隠していた。
伝えたらそばにいられなくなると思って。



