「あ、そういえば」
美咲が思い出したように言った。
「なに?」
「愛由香、昨日なにしてた?」
「昨日?普通に帰ったけど?」
「誰と?」
誰と?
「…1人だったよ?」
うん、1人で家まで帰った。
「昨日、あんたが誰かと一緒にいたって噂流れてるよ?」
「え⁉︎」
誰‼︎
「…あ、そっか」
わかった。
「もしかして、だけど」
「家の前で瑠衣くんに会った」
「そんなことだろうと思った」
美咲が呆れたようにため息をついた。
すっかり忘れてた。
瑠衣くんは私のお兄ちゃん。
…義理の。
親が再婚してお兄ちゃんになった人。
「最近だもんね」
「…うん」
最近話してないから修哉には言ってない。
「ま、あいつもいっつも女といるんだし、たまにはいいんじゃない?」
「でも…」
「気にすることないよ。なんにもないんだし」
そうだよね。
「…うん」
なんにもないんだから。
気にしなくていい。

