不器用少女の恋



「ねぇ、修哉、一緒に帰ろ?」


「ん?ああ、いいけど」

修哉がそう言う相手は私じゃない。

修哉に同じことを言おうとしていた私は思わず固まった。


「修哉…」


「あ、愛由香」

小さい声で言ったのに聞こえたのか修哉がこっちを見た。


「あ、えっと、その…」

言葉が出ない。


「なにか用?」

冷たい声で言われた。

そんな風に、誰にも言ってたことないじゃん。


「いや、用っていうか、その…」

なんで言えばいいの。


「修哉ー帰ろー」


「ああ、今行く」

なんで、その子と帰るの。

彼女は私だよ?

前は一緒に帰ってたじゃん。

2人とも笑ったじゃん。

修哉は、私になにも言わず横を通り過ぎた。


「いいの⁉︎愛由香!」


「……」


「ずっとあんな風に接されて!」

よくないよ。

そばにいてほしいよ。

隣で笑ってよ。

前みたいに笑おうよ。

好きだって言ってよ。

修哉がもう私のこと好きじゃなくても…


「わ、たしは、好き、なんだよ…」

想いは涙と一緒に溢れて美咲と2人しかいない教室の床を濡らした。