「愛由香ー」


「…」


「そんなに落ち込むなら『今までありがとう』なんて言わずに認めなきゃよかったでしょ!」


「だって…」


「なんであんな最低男に嫌われるかもーなんて気にしてるのよ!」

言いたいことはわかる。

嫌ってほど納得できるの。

でも、


「仕方ないじゃん。嫌われたくないもん」


「あんな男に好かれなくていいよ」


「…私だってそう思いたいよ」

嫌いになれたらどれだけいいか。


「…とりあえず!今日は帰るよ」


「……うん」

美咲は私の腕を引いて立ち上がった。


「カッコよくない?」

「誰かの彼氏?」

「マジ?」

「誰誰?」

「声かけてみよーよ」

女の子が校門を見て騒いでいる。


「誰かいるのかな?」


「誰だろうね」

私たちは気にすることなく校門へ歩いた。


「……香」

あれ、なんか聞いたことあるような声が…


「愛由香」

この声…


「愛由香…あれ」

美咲が目を見開いて指差す。


「え?」

私がその方向を見る。

うそ…でしょ?


「瑠衣、くん…」