艶やかな赤に、淡い桃色、鮮やかな山吹色……
私の目の前には色とりどりの着物
「…これかな?……いや、違う。」
着物を手に取っては止め、その隣の着物を手に取っては戻し…その繰り返しだけだった
「決められないなら俺が決めてやろうか?」
「月子、やっぱり俺が選んでやる。」
新見さん、斉藤さんは口を揃えて言った
「真似をするな。俺が選んでやるんだ。」
「それはこっちの台詞だ。俺が選んでやるんだ。」
このままだと二人の仲が悪くなりそうだし、私は慌てて止めに入ったが…
「「月子はどっちに着物を選んで欲しいんだ?!」」
と、私にまで火花が飛んでしまった。
「えっと……」
私は正直斉藤さんでも新見さんでも着物を選んでくれたらどちらでも構わないのだけど
「斉藤でなく、俺を選べ。選んだらまた今度も買ってやる。」
「いいや、俺だ。新見さんなんかに着物を選んでもらったら着物もお前も可哀想だ。」
「あの、私は……、」
「ほら、迷ってるんだったら俺にしろ。」
「いいや、俺だ。新見さんあなたは黙って下さい。」
いくら私が止めようとしても二人の勢いは増すばかりだった


