僕が後ろを向いたほんの一瞬であの人影はなくなっていた
「あの石は確か七百年に飢饉があった年の翌年になくなったある男性のお墓になるんですよ。あ、気味が悪いですか?」
「いえ、そんなことないですよ。続けて下さい。」
「亡くなったその男性の方は村人に殺され死んだと私は聞かされましたが、どういった理由でそうなったかは知りませんが…。」
「そうですか…。では、ここはその村の一部だったのですね」
「はい。あ、そうそう皆さんに言い忘れてたことがあるんです。」
「言い忘れてたこと?」
「この屋敷の裏に森があるでしょう?あそこは決して入ってはなりませんよ。…とはいっても必ず一人や、二人は入りたがると思いますがね。入っても良いですが、決して奥深くには入るのだけはやめて下さいね」
「え?」
「あそこは昔妖たちが確実にいる森なのです。命が惜しければ行かないで頂きたいです。よろしくお願いしますね。では、失礼します。」
八木さんは一礼して来た道へと戻っていった
僕はもう一度あの石に視線を変えた
(まさかあの石がお墓だなんて…)
あの石に歩み寄った
すると声が微かに聴こえた
ー『………ヵ。』
「…?!」
ー『………ヵ…?』
辺りを見回しても誰もいない
「まさか……ここから…?」
ちらりとお墓を見た
「まさか…ですよね?」
背筋がひんやりとした
「ははは……。…………疲れてるのですね。早いですがそろそろ寝てしまいましょうか。あ、近藤さんたちには夕餉はいらないと伝えておきましょうか。」
その場を後に部屋へと戻っていった


