「本当に名前思い出せないのか?」
「……。」
「まぁ、焦らずゆっくり思い出せ。な?」
「……。」
今度は首を縦に振った
「あ、そうだ。お前お腹空いてるだろ?今山南さんが飯を作ってきてくれるからな。」
永倉さんは私に向かって笑った
その顔はまるでお天道様みたいに眩しいほどだった
眩し過ぎて見れなくて思わず顔を逸らした
「ん?どうした?」
「……。」
「?ま、いいや。ほら、ここが山南さんの部屋だぜ。」
永倉さんは私を再び部屋に入れた
「ま、適当に座ろうぜ。」
私はなんとなく一番奥の隅に座った
「なんでまたそんな暗いところに座るんだ?こっちに来いよ。」
「暗いの…好きなんです。」
明るいのはなんとなく苦手だった
「へんな奴だなお前は。」
そう言ってまた永倉さんは笑った
「なんで…笑うのですか?」
別に私のことなんて面白くないのに…
「貴方の方が…変な人ですよ…。ふふ…」
「………。」
「どうかしました.?」
「お前、笑った方が可愛い。今からずっと笑ってろ。」
「か、可愛くなんか…。」
ふいって永倉さんからまた顔を逸らした
「なぁ、お前なんか好きなものあるのか?例えば、太陽とか、月…、」
「月…が好きです。」
「そうか。…なら、お前は月子(ツキコ)でどうだ?」
「月子…?別にそれでいいです…」
「うしっ。なら、お前は月子な。いいか?月子。」
「…はい。」
そう言ってまた永倉さんは笑った
(よく笑う…、変なの。)


