あたしは振り返らないまま。 途端に、彼が歩き出してあたしを追い越した。 黒いリュックが、視界に入ってくる。 まだ昨日初めて見たばかりなのに、何故か見慣れたような後ろ姿。 そして、彼は振り返った。 茶色い瞳が、あたしを見た。 「俺、黒瀬っていいます」 それだけ言って、笑顔で軽く頭を下げた。