「えーと、この人が」 と鏡を指差しながら言った女に、 「佐野あづさだ。お前が殺した」 と突き放したような口調で衛が答えていた。 他に言いようがあるだろうにな、と自分の物言いはさておき、要は思った。 「いえ、あのですね。 私が殺したわけじゃ――」 そう言いかけ、女は言葉を止める。 自分が殺したわけではない。 彼女にそう言い切ることはできないからだ。 彼女には記憶がないから。 それにしても、衛の悪い術中に、まんまとはまっているなと思った。 衛が彼女に説明したのはこうだ。