衛は言うだけ言って、さっさと出て行った。
あれでなかなか忙しい男だが、早くこの場を立ち去りたい理由はそれだけではない気がしていた。
それにしても、らしすぎる見事な大演説だ、と拍手したい気持ちで見送っていると、『佐野あづさ』となった娘は小首を傾げて呟いていた。
「僕が見つける、みたいな感じですけど。
まだあづささん、学生なのに、結婚しようとしてたくらいの大恋愛だったんでしょうから。
まあ、お気持ちはわかりますが、衛さん、警察は信用してないんですか?」
「高校生のときに、ちょっとな……」
そう曖昧に濁す。
衛が高校生のときに死んだ父親。
あの事件を、御剣の手前、早々に解決しようとした警察は焦って、ロクでもないことを言い出した。
あれから衛は警察を信用していない。



