憑代の柩

「そうですか。
 つまり、真実を知ってるのは、私だけってことですね」

「そうだ。
 間抜けにも、お前が爆発のショックで記憶を無くさなければ、まだ糸口もあったのに」
と罵った衛に彼女は言う。

「でもあのそれ、私が犯人でないのなら、私も被害者なんじゃないですかね?」

 気のせいだ、と衛は言い切る。

「第一、お前が花を運ばなきゃ、死ななかっただろうが、あづさは」

 はあ、まあ、そうですね、と彼女はなんとなく言いくるめられていた。

「ところで、通りに防犯カメラとかなかったんですか?

 その、車に置かれた花束に誰か何か仕掛けてるところとか」

 そこで衛は眉をひそめた。

「なかなか周到な犯人で、車が置かれてる場所には何処の店のカメラも向いてなかったんだ」

「周到ですかねえ」

 そう疑わしげに彼女は言った。