憑代の柩

「花は注文を受けてから、お前が店で作っていた。

 特に不審な様子はなかったようだ。

 防犯カメラがあるような店じゃないから、店主や店員の証言でしかわからないんだが。

 どうやら、お前は作った花を配達用の車に置いたまま、急に頼まれたもうひとつの花を作っていたらしい。

 その間に、爆弾を仕掛けられたようだ。

 現場から、二つ花籠の残骸が見つかっていたから、どちらも教会に運ばれたようだが」

「その二つの花の贈り主は?」

 わからない、と衛は言った。

「あの日、近くのホールでピアノ教室の定期演奏会があったらしくて。

 店主は他の店員とともに、あちこちから頼まれた大量の花束を作って配達するのに、右往左往していたようだ。

 お前は、頼まれた二つの花束の金額を書いたメモだけを残し、配達に出かけた。

 恐らく、贈り主や何かのメモは、お前がポケットにでも入れてたんだろう。

 車には残っていなかったようだから」